【被告労基署側の反論と私たちの説
明】
◆労働時間以外の負荷要因について
「Aら整備士は、おおむね前月末に提示される翌月の早番、遅番、夜勤、出張等の勤務スケジュールを定めた・・・勤務表に基づき整備業務に従事している。勤務表は基本的には
パターンが決まっており、・・・Aは長年にわたってこの勤務表により整備業務に従事していたものであっ
て、その業務が予測困難な ものとは認められない」(乙号証より抜粋)
◇◇私たちの説明◇◇
・あらかじめスケジュールが分かっていても、生理的に人間の体は機械のようにピッタリとそのスケジュールに
合わせられるものではあり
ません。非科学的な主張になっています。業務の予測が困難かどうかが問題ではなく、毎日出勤時間が大きく変動する深夜を含む交替制勤
務そのものが人間の体に与えるダメージが如何ほどであったか、また本人にどれだけの疲労蓄積を強いたのかを
推定しなければならないの です。
◆長期間の過重業務従事について
「業務の発症との関連性が強いと評価できる発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働に従事したものとは認められず、また発症前2か月間ないし6か月間にわた
る1ヶ月当たりの平均時間外労働時間数は、3時間25分ないし6時間であるから・・・月間当たりおおむ
ね80時間を超える時間外 労働に従事したものとも認められない。」 (乙号証より抜粋)
◇◇私たちの説明◇◇
・例えば、机に向かって事務作業する労働者と、極寒の千歳空港の屋外作業、真夏の羽田空港の駐機場(40度
を超えることも多い)での
人の命を預かる整備作業と、1時間という単位の労働の負荷は同じなのでしょうか? 「長期間」について、週40時間を何時間超えたか
を尺度としていますが、労働過重性を評価する時にはその作業場所や、作業内容に合わせた尺度が必要ではない
でしょうか。航空機整備作
業や航空機の操縦などは、多くの人命に責任を持つという非日常的なストレスに晒されながらの労働です。人命を預かる仕事の重さについ
て、相応に評価されないのであれば、今後も、過労による多くの犠牲者を生むことにつながります。厚生労働省
(国)がそのことに正面か
ら向かい合って解決しようと努力しなければ、それは航空の安全(利用者の命)をも脅かす結果を招くのではないでしょうか。
◆作業環境の負荷要因について
「・・・・従事する航空機の整備場所は、屋外の空港駐機スポットであるため季節によって温度変
化の影響を受けるが、冬期
は防寒衣類を着用するなどの対策が講じられており、急激な温度変化の環境は認められない。また、航空機エンジンが発する騒音等に
対しては、耳のプロテクターを着用する対策が講じられており、騒音が影響する環境にあるとは認められな
い」(乙号証より 抜粋)
◇◇私たちの説明◇◇
・冬期、極寒の北海道での作業で、防寒着を着ていれば「急激な温度変化の環境は認められない」というのは、
風のないところで、じっと していれば、ということでしょうか?
現場の実態は、風を遮る場所も少なく、手袋やプロテクターを外さなければ出来ない作業もあり、顔面までを隠すことも出来ないのです。このような見解を持つということは、現
場を調べ、その事実を知らないからでしょう。
◆「精神的緊張を伴う業務とは認められない」と主張していることについて
「・・一等航空整備士の資格を有する・・本件会社の基準の技量に達したものと認められ、・・・著しい精神的緊張を伴う業務であるとは認められない」(乙号証より抜粋)
◇◇私たちの説明◇◇
・技術資格を得たり、会社基準の技量に達したら、重要なシステム(例えばエンジンとか操縦系統など)の修理
作業であっても緊張をしな
くなるのでしょうか? あるいは高所作業の緊張は無くなるのでしょうか? 作業の失敗が及ぼす影響の予測は、経験や知識を積むほど
に、より強く自覚されるものです。(経験の浅い技術者は怖さを知らないという側面を持っている)
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